前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

永遠に完成しない頭の中の「満洲」

流石に満州関連は膨大な数が出版されている。便利な色眼鏡で見れば〜系とか分類は可能だろうけど、それでは読み手の幼稚さが知れてしまう。入門本や研究本の出版は増え続け、それを読み齧っても断片的なイメージしか掴めないが、気になる人脈は増えては行く。個人の回顧録から、満洲の各機関の詳細な研究など、途中で読むのを諦めた本も多数あり。


写真や設計図を眺めるだけで、解説までちゃんと読んだのは最近。ロシアとの対立と委譲「鉄道付属地」から広げる都市計画・建築物に内容が割かれている。四枚の奉天付属地平面図から見る変化が面白い。幾つかメモした箇所は「大連と中国東北地方〈2005~2006年版〉 (地球の歩き方)」にも載っていた。この本を編集の参考にしたと書いてある。


満洲鉄道まぼろし旅行

満洲鉄道まぼろし旅行

当時の少年誌に連載されたのかと錯覚しそうな編集。当時の膨大な資料写真を散りばめて内地の子供が著者の「おじさん」と満洲観光をする。子供への語り掛け口調と、作文。なぜか夜の歓楽街紹介が交互に並ぶ。開拓団訪問の写真は当時の広報紙からのものか、『慰安列車』という稿が面白く、移動する市場商店+映画上映施設の今で言うハイパーマーケットかも。


観光コースでない満州―瀋陽・ハルビン・大連・旅順

観光コースでない満州―瀋陽・ハルビン・大連・旅順

一見、日本の戦争犯罪を暴く旅かと誤解した。ありがたいのは他の満洲関連本には無い現在の東北地方の気配が過去と交えて書かれていること。内容も再読、旅(予定は未定)に必携かと思う。今までの出版本の蓄積から気になる引用もあり、取材旅の中での憂鬱な心境までが率直に書かれている。


個人的に衝撃だった部分を二箇所メモ。
理想と現実が乖離した満洲建国大学の在籍者には後の韓国ノテウ政権で首相を務めたカン・ヨンフンと寮で同室だったというのが上野英信。戦後「地の底の笑い話 (岩波新書)」など筑豊の炭鉱を転々としながら働く仲間たちの生き様を書いた。これ自体古い本ではあるけど、昔知人から是非読んどけと貰って読んだ本の著者。建国大学在学中に召集され広島で被爆という経緯をこの本『観光〜』で知る。炭鉱町撫順も満洲出身者の原風景なのか。


韓中首脳会談でのオフレコ話から、辿って調べ江沢民前主席の養父が当時南京近くで「日本の憲兵隊に殺された」事が書かれている。就任当時の日中間の険悪ムードがこれだと腑に落ちる。あまり広く知られていないのは外交を私怨と受け取られかねないからだったのか、謎だしこの史実を断定もできない。