前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

イランの少女マルジ


ペルセポリスI イランの少女マルジ

ペルセポリスI イランの少女マルジ

1969年生まれの作者が子供時代過したイランでの物語。漫画だけど影を強調した重たい版画似の作風。パーレビ国王の時代から革命、イラ・イラ戦争の体験へと続く。


子供ならではの夢想や遊びを通して現実社会がだんだん判ってくる様子は微笑ましい。それが神との対話や拷問ごっこでも。その辺がこの本の面白い処。ただし作者が恵まれた特別な環境で育ったのは事実だろう。そんななか思想犯で刑務所帰りの叔父を英雄として友達へ自慢したり、叔父が処刑されてから、いつもベッドで話をしていた全知全能の「神」に怒鳴って絶交したり・・・


(お手伝いが居て、父がキャデラックに乗っている。主人公はフランス系の学校へ通っている。)読み手(俺)には少女マンガのお金持ちで意地悪なお嬢様キャラを付加してしまう。曽祖父が王子で、傀儡や謀略に遭いながら、共産主義に目覚めるという話・・・も家族ならではの優し過ぎる眼差しを覚える。


ラスト近くイランイラク戦争での市民の愛国ムード高揚と、天国行きの鍵を渡されて若者の殉教を煽るシーンは深刻。歴史本や、現代のルポ、報道で知るイスラムの殉教は、旧日本軍の特攻とは異質で比較にならない、闇の前でとてつもない無力感を覚える。


宗教も時代と共に変質するはず、天国の設定こそ革命して欲しいと異教徒としては思うけど、何処の宗教でも俺様全能詐欺で信徒を殺す常連行為は止められない。
美酒も処女も、民主化を理由に爆撃する自由も要らない。
現世こそが地獄であり極楽なのに、なんとかランドなんか要らないのに・・・。