前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

アイヌの治造

2002年刊のアイヌの治造」を読む。
昭和十三年北海道日高生まれのアイヌの男の半生。聞き手で友人の著者は出版前に亡くなられている。
前半は少年時代まで過した村での春夏秋冬の思い出を聞き書き。中学校時代は仕事で忙しく、たまに通学して教室の後ろで村田銃を磨いていたとか。スコップを股に挟んで橇のように斜面を滑ったり(アイヌには杖で滑る技があると書かれている)、立派な角を持った雄鹿と素手で格闘したりと怪力かつ破天荒な武勇伝(同級生、同僚の証言あり)。結婚、事業の話はアイヌの文化とは薄いものかもしれないが、否応無しに和人化される状況は伝わる。本の後半旧知のマタギに訊く山での猟のはなしは、子供の頃読んだシートン動物記以来のドキドキ感を味わう。足跡を追って行くと突然後ろから襲われる「熊の戻り足」ってのは怖い。
国際先住民年など祖先の文化の継承に目覚めて行く様子も書かれている。文字にしてしまうと高尚なようで実際は家族も友人たちも巻き込んだドタバタに・・・・・・



古代蝦夷とアイヌ―金田一京助の世界〈2〉 (平凡社ライブラリー)を並列で読み始める。編者が書かれているように金田一京助の遺業を捉えなおす意味合いが強い本。元が古い時代に書かれた論文や講演ものなので、アイヌに対する当時の立ち位置が現代の読み手には相当イタイ。侮蔑、軽視、これが当時の当たり前な空気だったのかと思うと内容の偉業すらなんだか霞んでしまう。かといって無闇な差別語言葉狩りは望まないけど。