前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

我輩はカモである マルクス兄弟

マルクス兄弟のおかしな世界我輩はカモである [DVD]
映画バトンで挙げていた作品をハイドロ馬鹿なくらいに褒めてみる。
本来あらすじや映画評など必要も無いお笑い映画。
1933年制作の古典とは思えない濃い不条理ギャグ満載で、映画館で遅まきながら上映されて観た時には爆笑しながら青ざめてしまった。
子供時代にTVで見た8時だよ全員集合!ドリフの元ネタが沢山出てくるので、(マルクス兄弟の他の作品でも)「これら」を水で薄めたコントを1ヶ月以上繰り返すようなお笑いを観て育った貧しい自分を呪ったりと(あえて言い過ぎ)。同時期にBBCモンティ・パイソン「フライングサーカス」が短期間で作られているのを後追いで観るとなおさら。


この手の笑いが日本の風土に合わないとか一見もっともらしい理由はよく聞かれるけど、、つまらないタレントがじゃれ合うモノを「お笑い」とは呼びたく無いっス。

財政傾いたフリードニア公国。大富豪の未亡人に気に入られたグルーチョ扮するイカサマ師が新大統領に就任してしまう。口八丁で国を掻き回した挙句、個人的な好き嫌いで隣国と戦争をする。

というのが我がカモDuckSoupのどうでもいいストーリー。
制作費が膨大なわりに当時は興行的に当たらなかったらしい。
のちの映画には「若い男女を助ける」話が組み込まれるようになる。


ナチスドイツを取り上げたチャップリンの「独裁者」との比較。
比較と言ってもチャップリンは人情話が好きな日本で過大な評価を受けているし、戦前の一瞬と20世紀末から観れるようになったマルクス兄弟とは大違い。やっぱ名前がイケナかったのかな?


独裁者のラストでのラジオ演説は、多くの観客が感動するところかもしれない。自分には「悪」を独りの男に押し付けてみんなは騙されてるだけのいいひとと読めて相当に心象が悪い。
「我輩はカモである」を反ナチ反戦映画とするのはある意味失礼で、当時ムッソリーニが上映禁止にしていても『反戦』ではない。
大統領も閣僚も、煽られ騒ぐ国民や国歌にすら物を投げつけている・・・
味方の兵を間違えて後ろから機銃掃射する大統領のハシャギぶりとか、深読みするとキリが無い。


この手の笑いは作り手の罠にハマり易い。


ウディ・アレンハンナとその姉妹」(1986年)でも人生を思い詰めた自殺癖の主人公が七転八倒した挙句、古い映画館にフラリ入って「マルクス兄弟」の一場面を見て『悟り』をひらくシーンがあった。
なんだよこいつら昔から馬鹿やってるじゃないかと。