前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

シルクロード9400km走り旅

シルクロード9400km走り旅―ランニングシューズをはいた孫悟空

シルクロード9400km走り旅―ランニングシューズをはいた孫悟空

個人的偏見では山岳マラソントライアスロンの倍以上の距離を競うことは、体を痛めつける苦行に思えて、肉声を聞く機会は今までなかった。だが読み始めると面白く・・・も痛々しく、読み込みも途中で止められなくなった。マラソンを応援するようなものとは異質なものだ。本能で走者の視線で活字を追っていく。


1957年生まれの著者はトライアスロンから最終的に10倍!の距離を競うアイアンマンまでやってのけている。シルクロードの玄関口、西安ウルムチ2675㎞を53日で完走。ウルムチ→アジアの終点イスタンブールまで6699㎞を152日で完走している。
灼熱の夏の新疆ウイグル自治区を走りながら、拾ったダンボールに「水」と書いて行き交う自動車にペットボトルを投げて貰ったり、みぞれや雪の降る12月のトルコを走ったりと季節を選ばない計画も凄まじい。
道中親切な人達と沢山出会うが、彼方此方で警察にむやみやたらに捕まったり、自動車事故や強盗に会ったりと、様々な障害。そんな中で一日平均35㎞も走っている。
各地で道路工事の労働者と仲良くなったり、浮浪者に2日間同じ速さで追いかけられたり、坂道に落ちているコインを拾い集めたり、色々な処で日本の家族が心配してるだろうと無理やり電話を掛けさせられたり、二本の足のみで旅をすると、こんなにも濃い出会いがあるのかと唸ってしまう。本人の自覚とは別に「シルクロードをひたすら走っている男」という特別な尊敬と好奇が縁を呼ぶのだろう。
ヒトの潜在能力のもの凄さ。