忘却のバクダッド
『忘却のバクダッド』(2002年イラク・スイス・ドイツ)
作品の公式HP(映像と英独仏語の解説)
http://www.forgetbaghdad.com/
2時間近いドキュメンタリー。サミール監督は55年バクダッド生まれスイスで育つ。イラクからイスラエルへ移住した親の世代のイラク系ユダヤ人4人と、イスラエルで生まれたイラク系ユダヤ人の女性社会学者のインタビューで形成される。
ご老人達の話で印象に残るのは、50年代にイラクからイスラエルへと大量移民の切っ掛けになった「爆弾テロ」が当時のイラク政府とシオニストの仕業だと信じて疑わないこと。以前読んだ本に、第二次大戦中のヨーロッパ各国でのユダヤ人迫害や集団隔離に一部のシオニストが関与していたという記述があった。約束の地でパレスチナ人との人口比を逆転させる作為はイラクでも用いられたのか。
イスラエルのユダヤ人と言っても、ヨーロッパ系とアラブ系では差別があり、パレスチナ住民は更にその外にある。
社会学者のエラ・ショハット女史は、移民1世の両親への愛憎や学校での差別を語り、歴代のイスラエル映画でアラブ系移民の(愚かで滑稽な描かれ方など)検証指摘している。撮影時はニューヨーク在住で、窓の外に例のツインタワービルが映っていて、苦い伏線が交差する。