前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

世界の車窓から風に『美的』

史跡めぐりや大人の遊び場等、大凡無縁の旅なのでガイドブックは持って行かない。旅行者として予測不能な行動は、現地で普通に暮らす人達にはかなり迷惑な存在。


マレー半島を暇にまかせひと月程旅していたとき、鉄道で首都クアラルンプールに南下する途中にBIDAR『美的』という駅があるのを地図で見て、各駅に乗り換えて降りてみた。昔のはなし、そして何故かよく思い出す。駅の周囲はなにもないに等しい風景。ぬるい風が吹く小さい駅に座って居たマレー系青年に、自分がなにか間違えて来た旅行者だと思われ心配された。事務所兼作業場で次の列車が来るまでの1時間以上を休憩させてくれた。保安整備要員らしい中華系とインド系の男が交互に顔を出す。半袖の華奢なマレー系青年は時刻表を見ながら、ぶ厚く白い「駅長服」を着て、停まらない急行の通過のために短いホームに出ていた。
ペナン島の本屋で買ったマレー・英語・日本語辞典で話・・・らしくしながら、のどかな時間はあっという間に過ぎ、やって来た各駅停車に当然のように乗せられた。美的駅で客が降りたかは憶えていない。華奢な駅長が列車に型どおりの合図で遠ざかるホームに立っていた。