前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

アジア映画小事典ISBN:4380952932
極私的香港映画20年
香港映画を初めて観たのは池袋の
「シネマセレサ」での二本立てだった。
期待せず、涼むつもりが アジアの虜・・・


「五福星」奇謀妙計 五福星(84年)
面白さ満載。オールスターキャストも◎。
5人のコミカルな犯罪人とジャッキー・チェンの警官が協力してマフィアと戦う話。
ゴチャゴチャしていい味出してる香港の街を縦横無尽に暴れ回る、そんな連続。


「プロジェクトA」A計劃(84年)
話の内容よりも、ジャッキーの体当たりスタントで売り出された作品。
エイゼンシュテイン論「アトラクションのモンタージュ」を思い出すが、
情動を揺さぶるショックのあとに創り手側の「思想」は貼り付けられず、安心安心。
このヒットシリーズの他に、「ポリスストーリー」や海外ロケの冒険作品と、
ジャッキー主演作品を沢山観ていた事に気がつく(配給の問題)。


香港とは規定できないが、同世代から上はブルースリー信奉者が多い。
「アジアのニジンスキー」って初めて聞いたけど、言いえて妙。
賛否両論あろうが「孤高のぶとうか」を表現しているのだろう。
ブルース・リージャッキー・チェンリー・リンチェイ
カンフースターの光跡。単純化しすぎか。
★最晩年の毛沢東は香港の義侠映画や、功夫映画ばかり観ていたという。


何故か「ミスターBOO」シリーズは内容を憶えていない。
本当に日本で流行ってたのかな?


男たちの挽歌」 英雄本色 (86年)
随分後になってから観た。大ヒットした納得の内容。
80年代も香港はよい意味で泥臭かったのだ。


スウォーズマン 剣士列伝」笑傲江湖 (90年)
こここここここれは傑作なんだな〜
へへ兵隊さんの位だと、す、すごく偉いんだな!!
(パンダ大王様談)
荘子の荒唐無稽な世界に痛快無比なワイヤー付けたと思いねェ!


スウォーズマン 女神伝説の章」笑傲江湖II 東方不敗 (92年)
中性的妖魔で最強の「東方不敗」を中心に、剣士から服部半蔵まで出てくる。
実写版ドラゴンボール?それ以上の速度と破壊力、ケレン味たっぷり。


スウォーズマン 女神復活の章」東方不敗 風雲再起(93年)
シリーズ高水準の作品。逆から観ても無問題!
*2002年の新シリーズは観てませんが・・・


つきせぬ想い」 新不了情(93年)
たとえ70年代の少女漫画似でも、良い女優と香港に置き換えるだけで、
ここまで深みのある作品になる。
ヒロインが貧乏な芸人一家で暮らし、
往年の流行歌手の海賊版を楽しくレコーディングしてたり、
主人公が往年のジャズバンドとの即席ジョイント等。
あらゆる空間のクロスオーバーなのだ。
ラストは抑えた感じがなお印象に残る名作。


「0061北京より愛を込めて!?」 國産凌凌漆 (94年)
当時のTVCMをモジった日本題で損してるよコレ!
みっともないパックス・ブリタニカ病の007シリーズより
香港人が茶化す中華主義のスパイコメディの方が体にも好い!
チャウ・シンチーが水を得た魚のように「北京のダサぃスパイ」を演じる。
中国本土で公開禁止ってのも至極納得の逸品。
少林サッカーからハマった人にはお奨めです。
バカにしながら中国四千年の神秘の力を使う処が一貫した芸。
つきせぬ想い」のパロディや、ひどくしんみりさせるシーンもある。
(一番笑ったシーン)
上官役のダ・マンサイ(猥語らしい)との再会で
「今まで何処に?」
ダ「精神病院」
「働いてたのか」
ダ「入院してた」
全員深くうなずき納得・・・
こ、このキャラは主役食ってるかも。
ダ「マグナム2000!!!」って適訳なんだろうか?


酔拳2」 醉拳II (94年)
ジャッキーチェンの原点回帰作。歳を感じさせない武闘演技に驚愕。
この情熱が観客に届いたのだろう。香港でこの年大ヒット。
酔いながら強くなり酔いながら自身も壊す・・・
全身真っ赤にして、笑いながら泣く鬼神に見えた。



「女人四十」 (95年)英題サマー・スノウ
アルツハイマーの義父の面倒を見ながら家庭を切り盛りし、
職場でもバリバリ働く主人公。気の弱そうな旦那と年頃の息子の尻を叩き、
深刻になるはずの日常をテキパキこなして進む。なんでも体力勝負だ。
呆け老人が一晩中「日本軍と戦う」のも苦笑い。するしかない・・・
監督の許鞍華(アン・ホイ)女史は母親が日本人と知る。


「色情男女」(96年)
レスリー・チャンが売れない映画作家役で、ポルノ映画を撮る仕事を受ける。
なんとなく集まったスタッフの結束が段々と出来てゆく・・・、
スー・チーが演じる黒社会の情婦から女優に目覚めるところも良く出来ている。
カメラマンのスタッフが夜中に日本のAVビデオで研究している時に言う
セリフは勿体無い位良い。香港人が余計にいい奴らに感じる。


宋家の三姉妹」(97年) 宋家皇朝。香港日本合作
香港返還の年に完成した大河ドラマ。宗家って凄い。長女は大富豪と結婚、三女と結婚した蒋介石率いる現台湾政府との確執か、編集で削除シーンも多かったと聞く。次女と孫文の日本での結婚とか、さらりと日本を友好的に描かれている。この次女の人生こそ「波乱万丈」だろう。後年の毛沢東政権の愚策の中でどういう思いで過ごしたのだろう・・・長い映画なのに、それを感じさせない内容。


「メイド・イン・ホンコン」香港製造 (97年)
素人を多く使って、臭い立つ香港の少年群像を描かれていた。
高層団地アパートで、セブンイレブンでパートしてる母親と二人暮しの主人公。


喜劇王」喜劇之王 (99年)
チャウ・シンチーが映画役者志望の主役。ジャッキーも無名の名人として出てくる。なによりヒロインが勤め先のセーラー服キャバクラが、知る人そ知る「キューティレモン」の格好なのだ。主題歌?にも驚く。村下孝蔵「初恋」の広東語カバー。日本と香港こんな風に混ざり過ぎだよウワ〜な感想。


少林サッカー」 少林足球 (01年)
偶然、香港旅行中に封切りして観れた!日本公開は一年後のワールドカップにぶつけて来た。この映画のポスター観たときに「やられた」と思ったが、折角の面白アイデアが、マトリックスかぶれのデジタルエフェクトでうそ臭さ爆発になってしまった残念(これは他の香港映画にも言える)。
こうなったらアパッチ野球軍をツイハーグ監督で実写化希望。
いや、野球って世界規模じゃないよね。


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(余談)
「グリーンディスティニー」臥虎藏龍 (00年)米中合アカデミー賞4部門受賞
台湾の監督で、チョウ・ユンファ主演の作品。
欧米人が求めている中国的精神を商品化したとも・・・
この不思議な感覚。「ブレードランナー」をアジア人が撮って、
この映画を欧米人が撮るなら自分の幼稚な世界観にしっくりくるのだが。


「ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ」烈火風雲 黄飛鴻鐵鶏門蜈蚣 (93年)
リー・リンチェイ主演のシリーズ作は中国系アメリカ人の若者に受けたという。
血のルーツを映画で精神回帰される時代なのか。
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★追記★「つきせぬ想い」7/17〜23日キネカ大森で日本最終上映中、近々「色情男女」も上映する。
スウォーズマン」シリーズDVDボックス発売に続き、デジタル・マスタリング版も8月発売予定