前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

スターリンという神話

そして民衆は民衆の敵となり、ひとり彼のみが民衆となった。 A・トワルドフスキー



この日初版の「スターリンという神話」ユーリィ・ボーレフ著 亀山郁夫ISBN:4000010662
著者が半世紀にわたって集めたスターリンにまつわる逸話、寓話、伝説の数々。単なる大袈裟な噂に留まらず、スターリン本人が言いかねないと思われる言動が収められている。人間達への乾いた笑いから、読み返してみる度、麻痺し慣れていく自分が怖い。
< 奴隷制は、人々を奴隷制への愛にまで卑しめる。 L.トルストイ


スターリン時代のアネクドート(政治風刺)はネット上で2ちゃんねるの板に多く保管されている。
共産趣味者」と名乗る博覧強記なHPリンクのデータベースは現役の社会主義者より深い思索に到達してみえる。今更この本の内容をブログ形式で書く必要も無いかも・・・と言いつつ。特にお気に入りラブリー箇所だけを列記す。
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 ブハーリンスターリンをこう呼んでいた。
マルクスを読んだチンギスハン」 


 西暦3000年に刊行された百科辞典の記述。
ヒトラースターリン時代の小独裁者」 


 スターリンは映画「ヴォルガ、ヴォルガ」が好きで、何度も観てはたいそう満足した。ストーリーの展開がある一点までくると、彼はいつでも有頂天になってこう予言するのだった。
「この後で彼女は船縁の向こうに落っこちるんだ!」
カウボーイ映画を観るときも同じだった。弾丸がヒーローの頭上をかすめると、スターリンはこう叫んだ。
「畜生!もうちょっとで当たるところだったのに」


(私的注→毛沢東の最晩年はカンフー映画がお気に入りだった)


 「青銅の像」
20世紀半ば、ヴォルガ・ドン運河の入り口にある台地に、巨大なスターリン像が建てられた。その記念碑は小鳥たちの糞ですっかり汚されていた。糞は青銅の額をつたって流れ落ちていった。そこに一人の発明家が現れ、電気設備を考案した。銅像の近くに寄ってくる鳥たちはみな感電死して、地面に堕ちた。しばらくして銅像の近くに、鳥のお墓ができあがった。神の呪いを受けたこの場所が他の墓地と違っていたのは、鳥の屍をだれ一人葬ろうとしなかったことだ。鳥の屍骸は二重にも三重にも地面を覆い、ぞっとするような悪臭を放っていた。それはまるで、青銅の像そのものが腐って悪臭を発しているように思えた。
電気設備は取り壊され、鳥たちは再び記念碑の上にとまり、青銅の頭の部分を糞で汚したのだった。


(ヴォルガ・ドン運河第一水門にあった高さ72メートルの像で、スターリンはその建設のため33トンの銅を使用する政令にサインした。この像は、25キロ離れたヴォルゴグラードからも遠望できたという。)