前略。スターリン(旧ソ猫を噛む)

好きなドキュメンタリーと音楽と旅を楽しむ前提で原発の今

幻想文学の奇書。デビッド・リンゼイの最初の作品は、この年にロンドンで出版された。
もっとも数百冊しか売れず、新聞等では酷評されている。
70年代にコリン・ウイルソンの再評価を機に、80年代初め国書刊行会幻想文学全集」荒俣宏訳で出版された。
後にサンリオ文庫からも出されている。この本の内容については、「奇書」という漠然とものしかネット上で見つけられなかったので、この書棚に書いてみる。

簡単なあらすじ
ロンドンの屋敷で行われた降霊会で不思議な幻視を観た主人公マスカルは、知人のナイトスポア、謎の男クラーグの「旅」の誘いに乗り、古い天文台より「バックレイ(戻り光線)」を使って、牛飼い座の一等星アルクトゥルスを廻る惑星へ飛ぶ。二つの恒星を廻る大地は、強烈な日差しと、暴力的な創造と破壊を繰り返す。ひとり倒れていた主人公は原住民に助けられ、4日間のあいだに、様々な環境の土地を巡り、様々な感覚器官を持った土地の民と語り、尊敬し、・・・殺す。この世界の「創造主」と「真理」を求めるなかで、他の二人の名を創造主とも悪魔とも呼ばれていることを知る。

神智学がヨーロッパで流行っていた時代背景が、この作品の世界を彩色している。現に二つの恒星が作り出す2種類の三原色の組み合わせが、地球にはない色を造語によって書かれていたり、土地に合わせた感覚器官が体から生え、
空間認識が目まぐるしく変化する、という描写は「読み手の想像力」に負荷を掛けて来る!←グラフィックボード性能テストじゃないって・・・
しかし、真理を探すと言いながら、人殺しのロードムービーといってしまえばそうかも?聖書の重苦しい隠喩は自分には読み取れない。池が弦楽器になって、憑かれた聴衆達の屍骸が腐っている光景は、映画「エル・トポ*1」のシーンと重なる。想像難易度がハイレベルであるはずの「ソラリスの陽もとで」は映像化されているから読者に優しいのかな?とも。
ファンタジーやSF文学をよく読んでもいない者が騙ってみました。押忍!


よい書評があれば是非お教え下さい。

*1:監督ホドロフスキーホーリーマウンテン」「サンタ・サングレ」などキリスト教をテーマにメキシコ・ロケで生々しい作品を創っている。